精神医学 2018年 1月号 特集 Research Domain Criteria(RDoC)プロジェクトの目指す新たな精神医学診断・評価システム
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内容紹介 「診断」という「線」を引くこと尾崎 紀夫Research Domain Criteria(RDoC)プロジェクトの概念橋本 亮太・他Research Domain Criteriaシステムにおける認知・社会機能評価成田 瑞・他眼球運動を用いた精神医学診断・評価システムの構築三浦 健一郎・他睡眠覚醒制御系を用いた精神障害の分類システム構築宮田 聖子・他ゲノム変異を用いた精神医学診断・評価システムの構築木村 大樹・他末梢血バイオマーカーを用いた精神医学評価システムの構築 -現代のうつ病診断・評価における困難の打開に向けて加藤 隆弘脳MRI画像を用いた精神医学診断・評価システムの構築岡田 直大精神医学における機械・深層学習技術活用の可能性原 聖吾・他●エディトリアル来年の還暦の時を,今後の100巻の発刊の時をどう迎えるか三國 雅彦●研究と報告高齢統合失調症患者を対象とした抗精神病薬と脂質異常症治療薬に関する 医療同意能力の比較およびデシジョン・エイドによる介入の試み加藤 佑佳・他●短報若年性パーキンソン病を合併した統合失調症患者の1例林 眞弘●ミニレビュー反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)による治療抵抗性うつ病の治療と機能的結合の変化松田 勇紀・他●私のカルテからLi中毒により周期性同期性放電が出現した躁うつ病の1例加藤 友理子・他
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アメリカ精神医学会(American Psychiatric Association:APA)により提唱されている診断基準DSMは、臨床経験により体系化されたものとすれば、この特集の Research Domain Criteria(RDoC)は、米国立精神衛生研究所(National Institute of Mental Health:NIMH)により提唱され、「精神障害は脳の病である」とする脳科学を中心とした生物学的知見に基づく研究を方向づけるものである。おそらく従来の診断カテゴリーは見直され、新しいバイオマーカーの発見にもつながるものと期待される。<簡単な枠組だけの紹介>まず神経系を,Negative Valence Systems(ネガティブ系),Positive Valence Systems(ポジティブ系),Cognitive Systems(認知系),Systems for Social Processes(社会系),Arousal and Regulatory Systems(覚醒/制御系)の5つの研究領域(ドメイン)に分ける。次に5つのドメインごとに、構成概念・サブ構成概念(ConstructとSubconstruct)と8つの解析単位(unit of analysis)でマトリックス(行列)をつくり、各々のセルに研究結果・知見があればエレメント(Elements)としてリストされる。8つの分析単位は、「Genes:遺伝子,Molecules:分子,Cells:細胞,Circuits:回路,Physiology:生理,Behavior:行動,Self-Reports:自己報告,Paradigms:パラダイム」である。構成概念・サブ構成概念は、5つの研究領域(ドメイン)ごとにさまざまであるが、例としてCognitive Systems(認知系)を【表】で確認されたい。<展望>今までの研究は、ある疾患に対してどのような異常が認められるかを探索する中で診断指標が改訂されたり、疾患のカテゴリー分けが見直されたりしてきた。問題は同じ異常が様々な疾患に認められることと、逆に同じ疾患でも様々な異常が認められ、疾患と異常との対応関係が定まらないところにある。もっと言えば、因果関係が定まっていない。RDoCの研究デザインでは、構成概念・サブ構成概念のひとつを標的とする。例えば認知系ドメインのAttention構成概念を標的とし、Attentionに問題があるすべての被験者が研究対象となる。そして8つの分析単位から対応する生物学的基盤ないし指標が検討されることになる。RDoCの構成概念・サブ構成概念は、従来の診断カテゴリー(DSMなど)に代わるものではないが、両者はある種の類似性があるように思える。RDoCは精神疾患を全球的なスペクトラムと捉えているが、DSM-5も統合失調症スペクトラム、自閉症スペクトラムとあるように、スペクトラム概念を取り入れた。また、RDoCは構成概念・サブ構成概念というが、DSMの疾患名も構成概念といえるのではないか。逆にRDoCの構成概念を病名にしても違和感はない。例えば、Acute Threat ("Fear")は恐怖障害、Potential Threat ("Anxiety")は不安障害、Perceptionは知覚障害、Working Memoryはワーキングメモリ障害、Social Communicationは社会的コミュニケーション障害などである。そういえば、DSM-5には不安障害もコミュニケーション障害もある。いずれにしろ、RDoCは従来の診断カテゴリーと対立するものではなく、相互に研究の妥当性を高め合う関係にある。本書はRDoCを紹介するだけでなく、RDoCに基づく研究がいくつも載っており、研究者の良き道しるべとなろう。
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